~古事記と霊界物語~

     〔令和2年3月28日 藤井盛〕

〇国依別は出口聖師

出口王仁三郎聖師は、霊界物語第二十巻から登場する国依別は自分のことだと言われたという【註1】。  

国依別は登場早々、「嬶泣かせの家潰し」とか「後家倒し」と紹介され、お国、お光、お福、お三、お四つ、お市、お高など多数の先妻の名も出て来る(第20巻)。三五教の宣伝使松姫も昔のお松だと言い、「俺に秋波を送る様な奴だから、代物(しろもの)がどつか違つた所がある」(第21巻)などとのろける始末である。

出口聖師もまた、「多田琴と云ふ女である。或機会から妙な仲となつて居つた」とか「なつかしいやうな気がして、其女と同じ家に一宿することを嬉しく思うて居た」(第37巻)など、昔のことを赤裸々に語っておられる。

さらに、国依別が立派な神様から「お前はこれから浪速の里へ往(い)て苦労せよ。一人前になつたら世界を順礼せい」(第20巻)と言われたのに対し、出口聖師も大阪に初宣伝の時に、老易者から「これからお前サンの丹波に帰つてから十年間の艱難辛苦といふものは、今から思ふても真に可哀相な気がする」(第37巻)というように、二人とも若い時の苦労を告げられている。

また、国依別は高姫の「揶揄(からかい)役を仰せ付けられて居る」(第27巻)。玉から執着が離れない高姫を、偽神がかりで竹生島に玉探しに行かせたり(第25巻)、重箱に石を詰めて贈り、「如意宝珠玉さへ噛る狂女哉、岩さへも射貫く女の心哉」(第27巻)と皮肉っている。

しかし、玉の執着をとってやろうとする揶揄(からかい)も愛情表現である。また、松姫とのロマンスについても、国依別の話をウラル教の捕り手六人が聞き、「心の底より国依別の洒脱なる気品に惚込」んで三五教に改心してしまうのである(第21巻)。 

こうした人間味溢れるところも出口聖師に通じており、「聖師に面会すると、そのとたんに一切を忘れてよい気分になり、空っぽだった身魂が充実して来るのか何もかも忘れて、充ち足りたよろこびにひたる」【註2】とあるとおりである。

【註1】新月の光(下巻)第六章 昭和二十年

【註2】『愛善世界』令和2年2月号 「三千世界の大化物を観る」大国以都雄氏

〇国依別と言依別の一体的活動

さて、国依別を語るに何より特徴的なのが、国依別が、三五教教主の言依別と一体的に活動していることである。

二人は、飢餓に苦しむ村人に、昔から食べることを禁じられていた「御倉魚(みくらうお)」を食べさせて救い(第30巻)、また、琉球に渡り、琉の玉の精霊を言依別が、球の玉の精霊を国依別がそれぞれ腹に吸っている(第27巻)。

そして、二人はヒルの国の大地震を鎮め(第31巻)、アマゾン河に住むモールバンド、エルバンドの怪獣を逃げ去らしている(第32巻)。

なお、素盞嗚尊の分霊言霊別命が、少(すくな)彦(ひこ)名(なの)命(みこと)となった後に言依別として現れており(第22巻)、出口聖師も、自分の魂が素盞嗚尊のものである【註3】と言われている。明文はないが、出口聖師が自分だと言われている国依別もまた、素盞嗚尊の分霊ではないだろうか。「茶目式で揶揄(からかい)専門、淡白で正直で面白い奴」(第27巻)と評され、どこか憎めない遊び人風の国依別を通じて、瑞霊への親しみが一層湧いてくる。

【註3】わが魂(たま)は神素盞嗚の生(いく)御魂(みたま)瑞の神格に充されてあり  〔第41巻第16章 余白歌〕

〇七十五声の言霊

さて、この琉と球の玉などの御威徳が、次のとおり示されている(第27巻)。

〔琉、球の二宝〕風雨水火を調節し、一切の万有を摂受し或は折伏し、よく摂取不捨の神業を完成する神器。

〔五百津美須麻琉(いほつみすまる)の玉〕天ケ下に饑饉もなく、病災も無く戦争も無し又風難、水難、火難を始め、地異天変の虞なく、宇宙一切平安無事に治まる玉。

〔第27巻第13章「竜の解脱」要約〕

これらの玉により、宇宙一切が「平安無事」で一人も救いから漏れることのない「摂取不捨」の状態になることが示されている。さらに金剛不壊の如意宝珠について

〔金剛不壊の如意宝珠〕とも言ふ清き正しき言霊七十五声は、言霊の幸はひ助け、生き働く天地において、声あつて形なく、無にして有、有にして無、活殺自由自在の活用ある宇宙間に於て最も貴重なる宝であること。また、古事記の天照大御神の御神勅においても言向け和せ、宣り直せとあるとおりである。    

〔第27巻第13章「竜の解脱」要約〕

                       

このように、金剛不壊の如意宝珠である「七十五声の言霊」が、宇宙間で最も貴重な宝だということである。これは、古事記の天照大御神の御神勅にもあるということだが、「古事記略解」(第12巻)に天の岩戸を開いたのは、この七十五声の言霊だと示してある。これがみろくの世を開くとある。